私の「筋萎縮性側策硬化症」(ALS)発病から告知まで

98.09・登山の後下山中に両膝と脚の付け根の4ヵ所(初めての経験)が       
      攣り倒れ込む。
     ・行きつけの内科で診察を受けるも様子を見よとの指示が
99.01・インフルエンザに罹患、高熱(39度3日間)に苦しむ。
99.02・旅行先での撮影時手持ちカメラの保持に違和感、小刻みの震えが
      この頃から、左腕に力が入らない感じと握力の衰えを覚える  
99.02・再度内科を受診、血液検査の結果、筋肉の酵素が異常(激しい運動直後に匹敵)
     に血液中へ流出、神経内科を受診せよと、N大病院神経内科を紹介される。
     (T病院B先生の適切なご指示に深く感謝します、お陰で遠回りする事なく
      直接神経内科の門を叩く事が出来ました)     
99.02・N大病院神経内科受診・頚椎の異常の疑い有りとのことで、
      MR・Iでの検査をするも異常無し、検査入院を指示され、予約。
99.05・胃潰瘍のため大量吐血(病気を危惧して不安定な状態が胃に)
     ・二週間の入院治療で完治。
99.05・N大神経内科へ8日間の検査入院
     ・ハッキリと診断できるだけの数値がないので様子をみるようにと。
99.06・知人より、TJ医大病院のI教授を紹介されて受診
     ・N病院での検査結果を資料として提出するも、改めて検査入院を
      指示されて予約。
99.10・TJ医大病院神経内科へ検査入院
     ・検査終了後、耳鼻科へ転科、副鼻腔の手術(5時間)を受ける
      (副鼻腔内にできたものが、影響してる可能性ありと)
     ・結果は・通常診られる副鼻腔炎との診断
99.10 ・この頃には、左腕が肩より上へ上げ難くなる
99.11.08・I教授より・筋萎縮性側策硬化症(ALS)との診断告知を受ける
       ・若しかしたら効くかもと、リルテック錠(一般名リルゾール)を処方される
99.11・TJ医大病院・社会福祉士(ソーシャルワーカー)より今後の身の振り方についての
     助言を受ける。
     ・身の周りの整理をする事(生命保険は解約しない、住宅ローンは慌てて完済しない)
     ・福祉関係のサービスを積極的に受ける事、等々。 
     ・この事で、近い将来に死亡することもあると知らされる、頭をガッツンと殴られた感じ
     ・この日から、闘う術のない闘病が始まるも、相手は自分自身の頭、何故?如何て?
      が頭を離れず、整理も出来ず、精神的に不安定な状態が続くことに。 

T)では、ALSとはどういう病気でしょうか

  簡単に説明しますと、視覚や聴覚などの五感や知能は正常なまま、運動神経が侵され、
 進行に伴って筋肉が痩せ衰え、末期になると自分では全くといっていいほど身体を動か
 せなくなる病気で、未だに治療法が無い、難病中の難病といわれています。

T)ちょっと、専門的になりますが 
  
 ALSは、日本語では
   「筋萎縮性側索硬化症」(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)と呼ばれています。
英語名をamyotrophic lateral sclerosis といい、その頭文字を取ってALSと略称されています。
amyotrophicとは、筋の栄養(myotrophy)がなくなって(amyotrophy)、筋が萎縮するということ
です。 lateralとは側索のことで、脊髄の左右の部分をいいます。
ここは、大脳皮質の運動中枢の運動ニューロン(運動神経細胞)からの情報を脊髄の運動
ニューロンに伝える錐体路があるところですが、sclerosisとはこの側索が変性して硬くなること
を意味しています。この名からもわかるように、ALSとは運動ニューロンが障害され、運動が
し難くなったり、筋肉が痩せてくる病気で運動ニューロン病ともいわれます。

ALSは日本にだけある病気ではなく、アメリカ、ヨーロッパなど、世界中どこでも同じようにあり
ます。一般に40〜60歳で発症することが多く、男性も女性もかかりますし、肉体を使う労働者
スポーツ選手から、家事に従事する主婦、サラリーマン、学者まで同じくかかることが知られて
います。
あの、アメリカ大リーガー、ルーゲーリック選手(故人)が罹患した事で有名になり、アメリカで
はゲーリック病とも呼ばれています、イギリスの学者、ホーキンス博士が現在もこの病気と闘っ
ていらっしゃる事は有名です。
 
U)ALSの原因は何で?どうしてこんな病気にかかるんでしょうか?。

 世界中でいろいろと研究がなされていますが、今のところ原因は解っていません。
@原因には、興奮性アミノ酸のグルタミン酸の過剰説。
A一部の家族性のALS患者に見いだされた活性化酸素を解毒するSODI遺伝子変異が
 原因に関わっているという説。
B運動神経栄養因子の不足説。
 などがありますが、一つの原因だけではなく、幾つかの原因が重なって
 病気をおこすと考えられています。

V)では、ALSに罹るとどのような症状がでるのでしょう。

 (A)ALSが原因で起こってくる随意筋力の低下と筋肉の痩せの症状
 
 ALSの症状は、上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害とに
分けられます。普通は四肢筋の手足の動きにくさから気づきます。
まず片方の手や腕の力がなくなり、「手で物が掴み難い」「腕を上げ難い」
ということから始まり、段々それが進行するとともに、反対側の手や腕にも
力がなくなり筋が痩せてきます。
さらに足にも手と同じように力がなくなり、筋が痩せ歩き難くなります
(四肢筋の下位運動ニューロン障害=前角症状)。「足が突っ張って歩き難い」というようになる
こともあります(四肢筋の上位運動ニューロン障害=錐体路症状)。また、「ロレツが回り難い」
「飲み込み難い」という球麻痺症状が初めにでてくることもあります。
 一般に、症状はゆっくりと進行し、すぐ何かが出来なくなるということはありません。しかし、症
状がでてから数ヶ月、十数ヶ月とたっていく間には、初めにでてきた四肢筋の症状である、字
が書き難くくなる、歩き難くなる、自分の手で食事が食べ難くなる、といった運動の障害が目立
ってきて、仕事を続けるのが困難になるとか、主婦の場合には家事を続け難くなるなど、日常
生活の上に支障が生じてきます。その他、言葉がハッキリしなくなる、食物が喉をよく通らなく
なる、食べると咽るなどの球筋の症状や、呼吸筋の筋力低下で換気が少なくなって、時に息苦
しさを感じるなどの症状が加わることもありますが、これらが初期にみられることもあります。
 これらの運動の症状は、その筋の症状の現われ方や、他の筋の症状の加わり方や、症状
の進み方など、一人ひとりが、皆、違うのがALSの運動障害の特徴といわれています。そのた
め、今のやり難さに合わせて残っている運動の働きを使いやすいように、皆さんと相談しなが
ら工夫していくことが大切です。
 またALSには比較的特徴のある症状として、筋肉がピクピク動く(線維束性収縮=ファスィキ
ュレーション)ということがあります。腕、大腿、胸、背中、舌、口の周囲などのあちこちがピクピ
クするのを感じまた見ることもできます
 このように、ALSでは、身体のあちこちが思うように動かし難くなりますが、身体の中には麻
痺の起こり難い筋もあります。その一つが外眼筋ですが、目が全く動かなくなることは稀にしか
ありません。膀胱や直腸の排便、排尿時の括約筋の働きにも障害が及びますが、排泄のコン
トロールができなくなる程になることは一般にはありません。その他、アルツハイマー病のよう
な認知症(ボケ)が起こる事はありませんし、激しい痛みによって苦しめられるようなことも原則
としてないといわれています。

 (B)ALSが原因で起こってくる、自分の情動(感情の高まり、不安、訴えなど)を
   抑え難くなる症状。

 橋、延髄の脳運動ニューロンの上位運動障害の ’仮性球麻痺’では、時に、僅かな感情の
高まりや自分の不安や訴えを抑え難くなることが起こります。普通の時には抑えることができ
る程度のおかしさや楽しさ、また悲しさや辛さがきっかけで、表情も声も大笑い、大泣きとなっ
て、しばらく続いて自分では止められなくなることがあります。これは、強制笑(仮性笑)とか強
制泣(仮性泣)として知られていることですが、知らないと周囲が戸惑うことがあります。
 また、自分の手足などの身体の位置の変化(身体が自由に動かせないとき)や馴染んでない
介護者に交代するとか、蒲団、ベッドなど慣れた周囲の介護物を変ることなどがきっかけとな
って、普通では我慢できる程度の訴えや不安な気持ちが抑えられなくなり、一時的に繰り返し
訴え(要求)続けるようになることがあります。
これを情動が随意的に制止できにくい状況になっていると考えて、情動制止困難の症状といわ
れています。
 このように、ALSでは一時的に、自分で情動を抑え難い状態になることを知らないと、性格が
かわってしまったと悩んでしまうことがあります。


 W)治療法

 ALSの原因はまだ不明ですので、これを服めば治るという薬は未だ有りません。
 しかし原因および治療法の研究は我が国でも外国でも盛んに行われており、
 近い将来それが必ずや実を結ぶことと思います。
 特に遺伝子に関する研究には大きな期待が寄せられています。
 
今のところ治療に関する研究は三つの流れに分けられます。
@中枢神経系内にあるグルタミン酸の働きを抑制する薬剤に関する研究
Aさまざまな神経栄養因子を使って神経細胞の変性脱落をしようという研究。
B活性酸素の毒性をおさえる薬剤の研究。
 
 もともとグルタミン酸は脳内に多く含まれていて、重要な働きをしている物質です。しかし運動
系の神経細胞に、グルタミン酸による過剰な刺激が加わると、運動細胞が変性に陥るという学
説がたてられ、それに基づきグルタミン酸の作用を抑制する、薬の研究が盛んに行われ、この
結果リルテック錠(一般名リルゾール)がALSの治療薬として我が国でも使用されるようになり
ました。ただリルテックの効果は、今迄の臨床試験や投薬経験からみると限られたもので、さ
らに有効な治療法が開発される迄とりあえずこの薬が発売許可になったと考えてよいと思いま
す。重い副作用はなく、下痢、便秘、目眩、無気力や血液検査で肝機能異常、赤血球減少が
みられたりする程度です。リルテック錠は神経内科のある病院ならば何処でも処方して貰える
ようになりました。

 X)経過と予後

 ALSが自然に良くなることはありませんが、殆ど進行が止まってしまうことはあるようです。
しかし、一般にこの病気は進行性であり、麻痺はゆっくりながら進んでいきます。四肢筋、
球筋、呼吸筋の進む速度や程度は個人によって著しい差があります。時に、呼吸筋障害の
進行が早く、病気に気がついてから数ヵ月で呼吸が出来なくなって、人工呼吸器を用いること
もあります。しかし、呼吸筋麻痺になっても他の四肢筋、球筋、外眼筋も同じような早さで動か
なくなるわけではありません。
 @球筋の障害で話ができなくなった場合は、文字盤を使うとか、IT機器(パソコン他)を
  使うことによってコミュニケーションをとる工夫をします。
 A同じく、飲み込むことができなくなった場合は、胃チューブや胃ろう、を作ったりして
  液状にした食物や、人工栄養を、直接胃に入れます。
 Bまた、呼吸筋の障害では、苦しい呼吸を人工呼吸器によって補います。

以上の対応によって、ALSで命が奪われるということはありませんが、食物を喉に
詰まらせたり、肺炎になったりという、合併症をきっかけに急変することはよくあることです。
  
 ALSでの障害は運動神経のみであり、ほかの神経は侵されないために頭はしっかりしてい
ます。ALSは病状が進行すると、しゃべったり、コミュニケーションをとるのがとても難しくなって
きます。頭はしっかりしているのに、患者は思っていること、考えていることを相手に伝えること
ができないのです。なかには最後まで保たれるといわれる、眼球さえ動かなくなり、完全に外の
世界とコミュニケーションが取れなくなる人もいます(最近は脳波を機器で読み取ってコミュニ
ケーションを取ることも可能になりました)。このために、介護者にして欲しいこと、訴えたいこと
を一切伝えることができず、患者は想像を絶する肉体的、精神的苦痛に耐え忍ぶことになりま
す。
さらに、24時間完全介護や人工呼吸器をつけていることなどから、介護者にも肉体的、
精神的、経済的負担が重くのしかかり、家族共々を巻き込む難病中の難病です。

ご精読ありがとうございました。 (がんてつ)


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